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??/?? ??:?? 位置不明

 『それ』に気付いたのは一人だけではなかった。辺りに木霊する無数の叫びを聞けば城内の全員がそれに気付いているのは明白である。老若男女の区別なく、見てすらいない『それ』に対して恐れ、嘆き、只管に祈った。そこに倒れている女はきっと気絶したのだろう。そうした有象無象を掻き分けるように唯一人、この目で『それ』を見定めようとバルコニーに出た魔王が見た『それ』は。布に零した黒いインクのように遠方の空を覆っていき、そしてーーー急激にこちらに向かってきた。